【稽古日誌】柾目返し 手指に任せて。

久しぶりに技の動画を撮ってみました。
今回、注目して欲しいのは「体幹部のやる気のなさ」です(笑)。
技はいつもの「柾目返し」です。正座して向き合い、ただ、手を前へと出すだけの技です。
 
 
これまで何度もお話をしていますが、柾目返しはただ、手を前へと出すだけです。しかし、これがやって見ると、なかなか難しくって。
複雑な技も稽古、練習になりますが、こういう単純な技こそ、その術理を理解するには最適なんです。
今回ビデオを撮ってみて、思った以上に「変な」動きになっている事が分かりました。
普段、自分の動きって見えないですからね。
 
 
今回の術理は肘から先の部分を道具、もしくは子供とみなして、体幹部の「我」の部分をださないようにするって事です。
どう言葉にすれば伝わるのかな、肘から先の部分と、体幹部を含めた肘から上の部分は「別物」と考えて動いてみるとこんな技になります。
 
 
 
日本には丹田信仰があって、つい、腹の充実を求めてしまいます。ただ、その充実感が本当に「働きのある丹田」なのか、ってのを考えないとダメだと思うんですよね。
自分に丹田がある、って考えたい気持ちは分かりますが、それに縛られるとどうしても、研究が止まってしまうから注意です。
 
 
 
この時、誰かが「正しさ」を証明してくれればいいんですが、そんなこと、誰もできません。信じられるのは、自分の感覚です。
武術の良いところは技の良し悪しがしっかり結果として出てくるから、自分の中で決められるんです。
 
 
 
さて、この動画を一応、説明しておきます。
先ほども言ったとおり、ポイントは体幹部のやる気のなさ。とにかく、体幹部の元気が外へと出ない方がいいです。まぁ、手先だけで十分、相手を崩していける、と分かれば自然と腹に力を入れることもなくなります。逆に、手指に任せられないまま、体幹部が力を抜こうと思っても、なかなかうまくはいきません。
 
 
動画をみると、しっかりと手を抑えられているにもかかわらず、いたって、普通に手を前へと出し、崩しているように見えます。実際にも、目の前のコップを取るのと全く変わらない動きですから、圧力を感じることはありません。
 
 
この時、手順としては肘から先を外へとまず、切り離します。感覚としては肘をポンっと外へと落とす感じです。
落としてから、手首を起こしてみます。
手首が起きると言うのはポイントだと思いますが、起きてくると、指に元気が出てきます。
指先にまで感覚が届いていると、反射的に動くように意識する事ができます。
 
 
 
途中、両手を持たれて抑えられていますが、全く変わりません。
形としては合気上げ、両手持ち呼吸法と似ていますが、技と呼べるほどのものではありませんから、どう思われても結構です。
 
 
体がしっかりと働いていると、抑えるほうにも「術」が必要になってくるんですね。
きっと、こういう動きは昔の人には「当たり前」だったんじゃないかなぁ、と思います。
便利なものがない世界では体を使うしかないですもん。
 
 
 
 
こうした経験が「自分」って存在を教えてくれるんです。
自分が思っている以上に自分の体は不思議だって気持ち、ワクワクします(笑)。
 
ありがとうございました。

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