最初の一つ目は「右肩を引く」

 稽古をしていると、毎日が発見になります。
 
 もちろん、最初からそうだったわけではありません。甲野先生に出会い、実際に技を受けた時、どう言葉にしていいのかわからず、どう自分の練習に生かしていいのか、わからなくなりました。
 
 運がよかったのは私にプライドがなかった事。もし、わずかでもプライドがあればそれが邪魔をして、あれは気のせい、催眠術のようなもの、と手を出さなかったと思います。漫画や映画、物語の中の世界が目の前に広がっているんです。もう、興奮しました(笑)。
 
 
 
 今、「練習」という言葉を使いました。甲野先生は「稽古」といいます。最初、稽古という言葉を使うのにはものすごく抵抗がありました。自分のやっている事が「稽古」と思えなかったんです。練習はいやいやでも出来ますが、稽古はちょっと違う、そう思っていたからです。ようやく、自分が行っている事を「稽古」といえるようになって来ました。ぜひ、みんなにもこの「稽古」を伝える事ができればなぁ、と思います。
 
 
 
 自分の身体を頼りに動きを見直そう、そう考えても、実際にはどこから手をつけていいのか、全く、わかりませんでした。難しい「型」があれば手順を追っているだけで時間は潰せます。なんでも最初の数年は楽しいんです。手順を覚えるにしたがってやれる事も増えますから。
 
 ただ、私が躓いたのはそこから。壁が現れてからその壁をどう乗り越えていいのかわからなかったんです。壁が現れたら違う道を行く。それも解決方法の一つでしょうが、私の場合、逃げた先にもすぐに壁が出てきてしまって、全然、楽しくないんです(笑)。
 
 
 
甲野先生の動きを手に入れようとして手がかりにしたのは唯一つ、「手を上げる」という事だけでした。手を上げるだけですから、手順なんかありません(笑)。もし、体験なしにそれを指示されても続かなかっただろうと。実際に身体を通して想像を超えた世界を体験できたからこそ、興味を持って「ただ手を上げる」という動きを追求できたんだと思います。
 
 
 
 最初の手がかりは「右肩だけを引く」という動きでした。たまたま一緒にいた方にヒントをもらったんです。手を上げる「前に」右肩を引いて、その後手を上げてみると、相手に止められなくなります。
 
 
 
 今考えると、手を上げる、という単純な動きにもたくさんの「手順」がある、というのをその人は教えてくれたのかもしれません。今となってはその人が誰かもまったくわかりませんが、本当にありがとう!です。
 
 
 
 そうそう、甲野先生からは技術はもちろんですが、なにより、「稽古法」を学びました。この稽古法がすばらしいんです。号令に合わせた稽古は全くなく、すべて、研究です。自分の心に引っかかったものをほったらかす事無く、掘り下げるのです。気がつくと、自然に自分の心の中が滑らかになります。なかなかしっかりした組織ではこんな稽古はできません(笑)。空気に合わせる事のほうを皆、大切にしちゃいますから。
 
 
 
 「右肩を引く」というヒントは教えてもらいましたが、その後、それが本当だ!と気づいたのは自分自身の体験です。この身体を通して得た納得こそ宝物です。
 
 あれから20年ほどたちましたが、年々、気づきの頻度が増えていきます。気づきというのは気がつかないから大変です(笑)。気がついていないものは本当に素通りですから目の前にあっても使えないんです。さらに、現代はたくさんの情報がどんどん入ってきて、気づくよりも先に知識が増えちゃって大変です。歳を重ね、身体は衰えていきましたが、それ以上に効率のよい身体の使い方がわかってきて若い頃には想像もできなかった事ができるようになりました。
 
 
 
 なにかに気づく、というのはそこに「違い」があるからです。違いは心に生まれるものですが、この時、身体にも変化が起こっているんです。身体がどう変化しているのか、そのセンサーがどんどん敏感になっているのかな、と想像しています。ただがむしゃらに鍛える事しか知らなかった時にはその変化が見えなかったんです。
 
 
 
 全然壁を乗り越える事が出来なかった自分でしたが、気がつけば、壁を頼りに自分の知らない自分を見つける事が出来るようになりました。ちょっと違う自分になればそれまで壁に見えていたものがなくなるんです。こんな解決の仕方もあるんです。便利な道具が増えてやれる事も増えましたが、逆に言えば、道具がなくてはやれなくなってきたともいえます。自分の心に生まれる壁は自分だけの壁の事も多いです。便利な道具がなくても大丈夫、それを伝えられればいいなぁ。私がそうだったように、まず、「体験」をしてもらいたいです。後はお好きなように(笑)。 
 
 
 
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