上達のための足跡

【身体感覚の足跡】予測と結果のギャップを埋める力

身体の動きを通して気づいた「勢い」の力ですが、考え方にものすごく、応用ができる事がわかりました。先に面接での使い方をお話しましたが、この世は「予想」と「現実」のせめぎ合いです。未来を予測しないで、ありのままを・・・と思ってもつい、考えてしまいます。
 
考えた後についてくる現実が予測どおりならいいですが、なかなかそうは行きません。それでも、かなり予測の精度が高まってきてはいますね。ただ、そのおかげで、自分自身が予測と現実から生まれたギャップを乗り越える力を失ってきているかも知れません。
 
本当なら乗り越えられる力を持っていても、それを実際に乗り越えるという経験が無ければ、自分の強さを確認する事が難しいです。実は現代は不幸やツライ事を体験する事が難しくなってしまった時代なのです。
 
とはいっても、つらいことってあるぞ、というかもしれません。そうなんです。つらい事はなくなりません。問題なのは、小さいツライ事を経て、自分が強いと言う事を知る経験が出来なくなってきた、という事です。つらい事が出てくるときにはもう、大きくなりすぎているんです。
 
それでも、私は、大丈夫と言います。
周りにつらい事が無ければ、作れば良いんです。
武術の稽古で作る条件は自分にとって、つらい事。自分が今、なにに対して苦しいのかを考えてみると、成長するきっかけをもらう事が出来ます。
 
 
今、こうして書いているブログ。この一月、思い出しながら書いているこの【身体感覚の足跡】ですが、その多くはたった、数年の間に気づいた事です。40近いこの歳になってもなお、成長できる喜びがこんなにもあるとは、考えもしませんでした。うれしいギャップになっています。ぜひ、一緒に、それを楽しんでください。

【身体感覚の足跡】腕を折りたたんで伸ばす

実は、骨が廻りながら伸び縮みする事に気づく前には「折りたたんで伸ばす」という真逆の動きを試していたんです。胸鎖関節に気づき、腕を長く、関節を使わないようにしていました。そのための手順というかお作法が、折りたたんで伸ばす、という動きでした。
 
なぜ、折りたたむかと言うと、折りたたむ事で力が抜けるんでしょうね。その抜けた感じのまま、すっと伸ばします。すると、骨がうまくつながり、一本の棒のような腕が出来上がります。
 
この腕を押してもらうと、強いんですよね。そして、ただ強いというのではなく、気持ちよさがありました。多分、この時「骨」を身体で感じる事ができたんだと思います。どうしても、支えるためには力を入れなきゃ、と考えてしまっていましたら。
 
真っ直ぐ繋がる骨が見つかった事で、その「骨」自体を廻す感覚につながったのだと思います。とはいえ、いきなり骨を廻しても全然おかしくありません。ただ、頑固な私にはこの気づきの道がピッタリあっていたのかな?と考えています。

【身体感覚の足跡】身体の勢いを心に使う

勢い」の大切さに気づいた経験は、まさに、知っていた事を身体で確かめたという事になります。頭が大事だと思っている事と、身体が大事だと思っている事は違うと言う事です。
 
当時、こんな事を考え、子供たちに伝えました。ちょうど、受験のシーズンだったんです。
今の子供達は筆記試験の他に面接の試験もあるそうです。その面接試験の対策として、学校生活で上げた実績や持っている資格を考えていました。つまり、「なにを言うか」という材料を探していたんです。生徒会長、部活動、大会での活躍など・・・材料がたくさんある人もいれば、全然、材料が見当たらない人、それどころか遅刻ばかりでマイナス材料ばかりの子もいます(笑)。これ、パワーですよね。良い材料があれば、自信をもって面接に立ち向かえるかもしれません。でも、パワーはパワーに負けてしまうし、向こうの持っている考え(パワー)とぶつかるかもしれません。
 
面接練習を思い出してください。
コンコンとノックをするところから、それどころか、会場に行く前のコンディション調整もちゃんと指導してくれましたよね。扉の前からドキドキして、ガチガチになって、動けなければ、材料があっても無くても、見せたい自分、見て欲しい自分を表現するのは難しいはずです。
 
武術は「身体」を通して「心」を整える事ができるものです。真っ直ぐ、気持ちよく立ち、柔らかく、滑らかに、腕を挙げ、コンコンとノックをしたらどうでしょう(笑)。「なにが」効果あるかどうかはわかりません。でも、わからないものを気づけるようになりたい、いつも、そんな事ばかり考えています(笑)。

【身体感覚の足跡】勢いという考え方

骨は廻して使うほうが働きを生むことがわかって、一つのアイデアが生まれました。自然と、「そういう気持ち」になってきたんです。そのアイデアとは「勢い」という考え方です。
 
例えば「速さ」を考えてみてください。
時速100キロ。と時速50キロ。速い方が良いとすると、100キロの方が魅力的です。でも、一方は少しずつ、遅くなり、もう一方は少しずつ速くなるとすれば・・・時間の経過と共に、逆転していきます。速度、加速度の問題です。
 
武術の動きにもこの考え方が似合いそうです。
相手を崩そうとして、動いたとき、そこに相手を崩すパワーが必要です。ついつい、パワーを出すために力を入れてしまいます。これが、力みを生む原因となり、動きを止めてしまったりします。単純な力は相手にもばれやすく、止められる事で、さらに力が必要となります。相手の強いところへさらに攻撃をするのですから、効率は悪いですよね。
 
虚実、という考え方がありますが、相手の虚となる部分へ自分の実を入れていく。身体の小さい人、力の弱い人が力の大きい人に対応するにはこの考え方が必須です。
 
骨を廻すことで、そこに、勢いが生まれてきます。遠心力のように、徐々に力が増していきます。パキパキと折りたたむ動きはその動きの終わりで速度がゼロになっていきますが、廻して使うと、そのロスが減り、動きが繋がっていきます。その流れからうまれる力を相手に渡すと、相手はその力の出所は感じられても、微妙に変化してくる方向に惑わされて、結果的に、崩れてきます。

【身体感覚の足跡】骨は廻す?廻る?

一日、忙しく気をつかったある日、お風呂の中で気がついた事がありました。
 
あっ、骨がふわっと廻っている!
 
それまで、人間の身体は関節で繋がり、動いている、と思い込んでいたんでしょう。骨にに廻りながら動く感覚が生まれてドキッとしました。パキパキと折りたたむだけではなく、回旋させながら結果として短くなったり、長くなったりするわけです。意識と動きの間にギャップが生まれる事で、相手にもこちらの意図が伝わらずにすむのかもしれません。
 
それにしても、気づいたのが、クタクタになって、休んでいるお風呂の中とは・・・。身体が求めて、その動きをしたんでしょうか?気づく事がなければ、未だに、この手をパキパキ使っていたかもしれません。
 
骨が廻る。当たり前に思うか、そんなこと・・・と聞かないでおくのか、どちらでも良いですが、気づいて以来、普段どれだけこの身体に負担をかけていたのかがわかりました。
 
たっぷり、仕事して、クタクタになって、休んでください。きっと、気づきが生まれると思います。