【身体感覚の足跡】精神的操作

古武術の稽古は気がつかない間に、稽古を通して、感性やセンスが磨かれていく、という側面があります。「側面」と書きましたが、コンピューターなどにまかせる事で、センスを磨く事が出来なくってしまった現代においても、センスを磨けるものですがから、今を生きる誰にとっても、一番必要なものかもしれません。
 
身体を使っていく方法をこれまでいくつか紹介しました。
指アーチ流れ丹田・・・それぞれ働きがあって、強い力を生み出す事が出来ます。身体を動かす事によって生まれてくる力です。しかし、この時、精神的な面でも働きが生まれている、という事に気づきました。
 
技が効くときというのは、こちらの身体操法(指アーチ流れ丹田など)から生まれてくる力が抑える側に驚きを与え、こちらに対して、気を使うようになるのです。相手がこちらを気にしてしまえば、当然、自然な振る舞いはできません。予測を常に超えていくような動きをする事で、結果的に、技を効かせることができるようになります。
 
暗示のようなもの、と言っても良いかもしれません。
この精神的な働きを主にしてみると、それほど大きな力を作り出さなくてもうまく行く場合があります。相手の気をそらして、そのスキに入っていくのですから、簡単です。
ただ、この精神的な技法だけで済ましてしまうと、「イザ」という時には役に立たなくなってしまいます。
 
型稽古で技を練習していく時に間違いが起こりやすいのはこの時です。普通、師匠は弟子からすると、気にしてしまう存在です。その結果、師匠を前にした瞬間、身体が固まり技がかかりやすくなるということも考えられます。でも、そんな技、なんの意味もありません。
 
実際に、生活の中で必要とするのは、使える技です。使えるのであれば精神的な力であっても構いません。でも、使えないとき、それを精神的な力のせいに転化しても全く意味がありません。
 
構造として、人は反応するように出来ている、と理解しておき、その上で探していけば、スキのない技を作れます。そもそも心と身体は一つのものです。当然、どちらからでも「本当の自分」に近づいていく事ができるでしょう。しかし、精神論を説く人は実践が苦手、実践にこだわる人は、精神が苦手だったりします。武術はその両面から入っていけます。迷いを払う方法としてはなかなかなんですよ。
 
 
試し方を紹介しておきましょう。
片手を抑えてもらいます。その手を相手の力に負けないように上げていくわけですが、そのまま上げると、相手はしっかり、こちらの手の動きを読み、対応してきます。
この時、普通ではない使い方として、指アーチ流れ丹田などを使ってきました。でも、精神的な操作だけで考えると、もっとシンプルでもいけるのです。
片手が空いていますね、その片手で「ばれないように」相手のお腹を触ってみます。相手はその感触にふっと驚き、押さえている手の集中が途切れます。その瞬間であれば、「普通の」上げ方でなんの問題もありません。
 
相手の気を引く方法として、なにができるか、と探してみるのも良いかと思います。

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