猫背のなおし方

今日は「猫背」の話をします。
 
 
 
日本人には猫背で悩んでいる人が多い、といいますが、悩みになってはいないけれども、猫背な人も多いですよね。
私は、そちら側だった、みたいです。
 
 
 
というのも、これまで自分の姿勢の悪さを気にする事はありましたが、まぁ、これぐらいは許容範囲だ、と考え、特に気にして取り組んできた事は無かったですから。
それでも、武術の技が進むに連れて、身体の使い方が変化、進化をすることで、普段、気がつかないけれども、身体に負担をかけてきた、というのを実感してきました。
 
その結果、歳は重ねていくものの、年々身体に軽さを感じることができ、老いに対して武器を持つことが出来ることこそ、現代に武術を学ぶ意味なのだ、と考えていました。
 
 
 
甲野先生と出会って18年間、これまでもずっと、楽しかったのですが、先週木曜日、自宅でこうして書き物をしていたとき、突然、肋骨の関節が気になり、あれこれ動かしているたった5分間の間に一気に姿勢が変わってしまったのです。
 
 
 
その結果、自分が長年、猫背で有ったことを理解し、そして、その原因が勘違いであったことがわかりました。
 
 
 
今日は「猫背のなおしかた」の話です。
ただ、最初に言っておきます。今、こうして猫背について言葉にするのはこれが初めてです。
肋骨の使い方がカギになりますが、自分の現在の使い方をそのまま書いておきます。わかりにくいところばかりになるかと思いますが、ご容赦ください。
 
 
 
先ほど、肋骨について調べていて、面白い事をしりました。
「申」という字。これは、肋骨と背骨を意味しているそうです。
そして、この字は「伸」にもつながりますよね・・・。
肋骨がちゃんと、正しい場所に位置することで生まれてくる感覚、それが「伸」なのかもしれませんね。
 
 
 
今、「正しい場所」という言葉を使いました。
ご存じの方も見えると思いますが、師匠である甲野先生は「正しい」という言葉を使う際にはものすごく意識をされます。私自身、甲野先生がそのまま「正しい」という言葉を使われている記憶がないほどです。
多くの人は「正しい基本」などと言って安易に「正しい」、という言葉をつかいますが、身体にとって、なにが自然かを問い始めてみれば、なかなか「これ」という答えには行き着かない事がわかるんです。
甲野先生はそれをご自身で体感されたからこそ、身体操作で前を行くにも関わらず、「正しさ」を決めず、研究を続けられています。
 
 
 
そんな先生を師匠にし、追いかけてみると、当然のように、私も「正しさ」という事には注意をして稽古をすることになります。
身体に生まれる新しい感覚は「確か」ではあるものの、それは、その瞬間に感じたものであり、それが誰にとっても「正しい」という訳ではありません。
だからこそ、常に自分の身体と向き合うことができるようになり、結果として、得たモノに縛られず、どんどん新しい身体、新しい自分と出会い続けるという事が出来るようになります。
 
 
 
今日お話する「肋骨」にしてもそうです。
つい、数週間前には「顎」という、実に小さく、そして動きがよく、壊れにくい身体と出会いました。この顎を意識して動いてみたときにはそれまでのどの動きよりもなめらかにそして、軽く動けるようになったんです。
この大発見からたった数週間でまた、がらりと違う感覚の身体を今、感じています。
そして、さらに、今回見つけた肋骨の感覚はこれまでのどの動き方にも無かった新しい原動力を作り出せる事がわかったんです。
 
 
 
実は「猫背のなおし方」っておまけです(笑)。
自分が動くとき、考えもしなかった力が自分の身体の中に作ることができるんです。そして、これはいつまでもなくならない力です。
人間の凄さってこれまでに無かったモノを世界に作ることができる、という事ですが、もうすでに、身体の中ではゼロから力を生み出していたんだなぁ、と思うともう、なんとも言えない喜びが沸いてきちゃいます。
 
それでも、なかなかこういう喜びは伝えられない、というジレンマも分かっているんです(笑)。
だからこそ、介護やスポーツ、これまで出来なかった技が出来るようになりますからね、という方向からも伝えているんですが・・・。
 
 
 
猫背、というのも有る意味大きな成果かもしれません。見た目が9割の時代ですから(笑)。
 
ただ、この猫背がなおる以上に、自分の身体、特に背骨ですからね、その新しい身体に気づいた瞬間の気持ちを大切にしてもらいたいなぁ、と思います。
今、気にしている人にはもちろんですが、私のように、直接意識していない人もほぼ、猫背ですからね、自分の背骨をよく、感じ取ってみてください。
 
 
 
では、そろそろ。
とにかく、勘違いなんです。方向の。
 
猫背ですから、丸いですよね。
今日は良いところを見せなくちゃ、と意識したときには、ピン!と背骨を伸ばしたりしますよね。
この時、伸ばす方向はアタマの方向、上へ上へです。
 
たった一枚写真を撮るのならば、瞬間的でもいいですが、一日、毎日、ずっと・・・となると、くたびれてまた、猫背に戻ってしまいます。
 
 
 
背筋を伸ばそうとすると、たいていの場合「腰」に力を入れるはずです。まぁ、その腰も丁寧にみれば5番だったり1番だったりするんでしょうけど、まぁ、どの腰でもいいんです。腰は腰です。
腰に力を入れてちょっとの間は解決しますが、そもそも腰ぐらい個性がでるところってないですから、なかなか腰の癖は治りません。むしろ、その個性を受け入れることが大切なくらいです(笑)。
 
問題は腰に力を入れてしまったこと。
その瞬間、背骨と肋骨の関係を固めてしまっています。
 
 
 
肋骨って鳥かごみたいな形をしていますよね。
その肋骨は大切な臓器を守るために存在していると言われています。
でも、「それだけじゃない」んです。
ただ、普通に腰に力を入れ背筋を伸ばしてしまうと、肋骨とその中にある臓器の重さが全部おもりとして使われる事になります。
 
想像してください。
釣り竿の途中に大きくて思い荷物がくっついている姿を。
 
釣り座をもつ手にはぐっと、重さがかかります。
この時の手が腰です。
釣り竿は大きくしなり、今にも折れそうです。
それでも、釣り竿もがんばります。しなりながらも、折れないようにがんばり続けるんです。
 
 
 
私たちの背骨はこうして、重い荷物をずっと、抱え続けているかもしれません。何十年も、ずっと。
私の背骨はそうでした・・・。
 
怖いなぁ、と思うのはその大変さに普段、気づかない、という事です。
ちょっとずつ重みをましていくのかもしれません。
老化するからしかたない、と思っているからかもしれません。
とにかく、気にしないまま、ちょっとずつ、背骨に負担がかかりすぎていたのです。
そして、この無意識に負担をうけとった身体を「本当の自分」だと思いこんでいるんです。
 
 
 
でもね、違いますからね!
断言します。
ちゃんと身体を有るべきところにおいてみると、それまで感じていた重さが一気になくなるんです。
何十年もずっと、重い荷物を抱えてきたんだなぁ、と思うともう、なんと言葉にして良いやら・・・。
まぁ、だからこそ、こうしてダラダラと言葉にさせてもらっているんですけどね(笑)。
 
 
 
方向の話でしたね。
腰を使って上へと背筋を伸ばせば確かに背は伸びます。
ただし、この世界には「重力」がありますよね。
その重力と闘うって大変です。
腰の頑張りはいつまでも続きません。だからこそ、がんばって猫背を治そうと思っても、負けてしまうんです。
 
いいですか、肋骨は上ではなく、横に伸びています。
この肋骨、背中に「関節」があるんです。
実は前面は関節ではなく、軟骨なんだそうです・・・。
この話が肋骨の感覚を教えてくれたんです。
自分の肋骨を背骨との関節に注目する事で感じることが出来ました。
 
 
 
 
肋骨を意識するとき、ついつい、身体のお腹側を考えてしまいます。でも、関節は背中。背中を考えてみてください。
 
背骨から横にでている骨、それが肋骨です。
そのつながっている関節を意識してみると、肋骨そのものの重さで背骨がずいぶん、前へと引っ張られていることに気づきました。
関節が伸びてしまえばそこに隙間の感覚が生まれ、せっかくの力の流れが止まります。
 
これは良くないぞ、と思い、関節が緩まないように、肋骨を背骨の方向へと押し流してみたんです。
すると、顎や股関節、肩甲骨の時に感じたのと同じように「はまる」感覚が生まれました。骨と骨がぶつかるような感覚です。
 
だれにどんな事を言われてもその瞬間、自分の身体で起きていることです。これまで感じたことのない気持ちのいい感覚がそこに有りました。
 
 
 
 
背骨に向けて肋骨を押し流す。
この言葉がうまく、みんなの身体に合うのかはわかりません。でも、間違いなく、肋骨と背骨は方向を合わせることで繋がり、働きを生みます。
 
背骨方向へと押し流すことで、関節部分のアソビが消えていきます。
すると、それまで「荷物」でしかなかった肋骨が今度は背骨を直接動かせる「ハンドル」のようになってきたんです。
 
 
 
腰に力をいれて背筋を伸ばせば確かにまっすぐに近づきます。
でも、それは長続きしませんし、腰に力を入れているため、自由な動きが制限されてしまいます。
でも、背骨方向、つまり左右です。中心に向かって肋骨を押し流す動きは背骨に芯を作り、そして、肋骨というわかりやすいハンドルを作ってくれるのです。
これにより、左右へ背骨がひとつひとつ、流れを作ることが出来ます。
結果として、まっすぐな姿勢を疲れることなく、ずっと、維持していくことができるんです。
 
 
 
いや、むしろ、これまでの上下につぶれてしまう背骨の状態ではいられない、ってなってしまいます。
肋骨を背骨に向かって押し流し続けることこそ、「楽」を手に入れるカギになるんです。
楽を求めていけばいくほど、結果的に猫背から遠ざかっていっちゃうんですよね。
 
  
 
 
 
立っていても、座っていても、寝ていても、私たちの腰には常に力が掛かっていたみたいです。
先ほども言いましたが、怖いのはそれに気づいていない事。
そして、気づいていても、自分一人の体重しか支えることをしらないと、人生で出てくるたくさんのプレッシャーに押しつぶされてしまいます。
 
武術は敵との出会いを通じて、本当の自分の力に気づくことができるものです。
どんなに大きな敵と出会い、攻撃されても、この肋骨の使い方は変わらない、そう感じます。
実際、これまでよりも、より細かく、速く、自分の姿勢を整えることができるようになりました。おそらく、肋骨を常に押し流していく感覚が背筋に芯を作り続けているからだと思います。芯が有るモノが動くんです。これまでのように、動いた先で姿勢を整えるのとではレベルが違いますよね。
 
 
 
私自身、現代に生まれ、生きている人間です。
便利なモノをたくさん使い、それによって幸せを感じてきました。
しかし、便利なモノにはちょっと、反動が合ったみたいです。
 
 
便利さによってストレスは減ってきたモノの、自分自身に対しての信頼をもつチャンスをなくしてしまっているかもしれません。
本当は強いんです。誰でも。
誰でも、この瞬間、なにも学ばず、なにも持たなくても、無人島に飛ばされてしまっても、生きていける力を持っているんです。
「生きなきゃ」と心の中に生まれた瞬間、自分の持っている強さを発揮できます。
そして、その強さを自分の意識が認めたとき、自分への評価が変わるはず。自信ってそういうモノだと思うんです。
 
 
 
でも、現代はとにかく、便利で苦労なく、安心、安全に・・・です。
なかなか自分自身に信頼をおく機会がありません。
 
 
 
 
あぁ、そうだ、だからこそ、病気を克服した人は強いんですよね。自分の弱さと強さをちゃんと身体で感じた人ですもの。 
 
 
幸いなのか、私は大きなケガも病気もなくここまできました。
もちろん、それはいいのですが、自分に対しての評価はとにかく低く低く大人になっちゃったんです(笑)。
 
でも、今はそのおかげで甲野先生に出会い、身体というすばらしい自分がいたことを知りました。
気がつけば、その身体の楽しさを伝える仕事をするようになり、自信を持てずにきた人生があって良かった、なんて思っています。
 
 
 
みんなちゃんと、すごい身体を持っているんです。
アタマで解決しにくい問題がたくさん増えました。
こういう時代だからこそ、自分の身体に向き合えるのかもしれません。
その出会いのチャンスを用意します(笑)。
自分の身体の感覚をぜひ、味わってください。
甲野先生の浜松、名古屋講習会も近日ありますし、各地の文化センターで私が講師となり講座を開いています。おそらく、今月は「猫背」です。そして、また、きっと、発見があるはず。いつも、新しい身体の感覚を伝えるようにしています。
詳しくはカラダラボのWEBサイトをご確認ください。
 
 
 
猫背のなおし方だったんですが、やっぱり、脱線していきましたね。
ポイントは上下ではなく、左右です。
上へではなく、背骨に向かって、背中(肋骨)を押し流すこと。
肩の柔らかい人は後ろ手に合掌をしてみるといいかもしれません。
 
肋骨の関節が背骨につながった時、「自然と」胸が張りに、結果的に猫背では「いられなくなります」。
無理がなく、こちらの姿勢のが楽なので、続くんです。
 
以上!
ありがとうございましたm(._.)m

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