身体を「動かす」という稽古をはじめて、気になるのはこの自分の身体がとことん、動いていなかったという事です。もともと、何をさせても自分はうまく出来ない、と思っていたので、その事で元気を失うというよりも、もし、この身体を動かす事ができたら・・・と逆に希望が見えることが多かったです。
今から話をする「手首」に関してもそんな気づきでした。
動かす、という事を考えると、動きは柔らかい方が良いように思えます。現に、自分の理想としては柔らかくて速い動きを作って稽古をしていました。
指アーチから出る力を生かしたまま剣を握れないだろうか?と工夫をしていた頃だったと思うけど、ある人から、昔、「剣はくそ握りで」とどこかで見た、と聞きました。柔らかくなくては・・・と思っていたところだったので、非常に驚きましたが、こういう「まさか」の理論は大好きです(笑)。
さっそく、おしゃべりをしながら、くそ握りってなんだろう?と工夫を始めました。
とにかく、その言葉のイメージから、思いっきり、自分がやれるだけの力を出して、握る、事だろうと試していたときです。ふっと、手首が軽くなって、剣がものすごく速くなったんです。それ以前の自分と比べてですが・・・。
なぜ、こんなにも力んで、この剣を握っているのに、こんなにも速く剣が振れるんだろう・・・って。驚きながらも、そこは研究モードですから、疑いもかけつつ、なにが自分の身体に起こっているのかを探ります。
他人がやれば魔法のような動きも、自分の身体に生まれたものはちゃんと答えはあるものです。なるほど・・・これまで、気づけなかった自分の中のブレーキ、障害がそこにありました。
手首です。
手首を柔らかく・・・と考えていたのは、抜けば抜くほど、速くなると信じていたから。でも、実際には手首にはまだまだ余分はゴミが溜まっていたようです。そのゴミを「くそ握り」が手先に押し出してくれたようで、結果として、剣と腕が一体化したみたいです。まぁ、確かに、これだけ握りこんだら、一体化です(笑)。でも、ここまでは普通、やりません。それぐらい、力一杯でした。
工夫というほど、工夫はありません。あただ、握るだけ。
これは拳でも良いみたいです。
ぐっと手首を握られれ、押されたときに、指アーチを作ると、指先に強さが生まれます。その手のひら版といいましょうか、ぐっと、くそ握りをすると、腕に溜まりそうになった力が手首を通って、手のひらの中心へと押し出されます。
結果として、ものすごく、硬い拳が作れます。
こうして、昔を思い出しながら、書いていますが、このくそ握りがやがて、手の三角の工夫へと繋がるんですよね。今では力まなくても、手の内の三点にバランスよく力をいれると、くそ握りに負けない強さが作れます。
でも、手のひらを使う、という点で、まず、使ってみる、握ってみる、開いてみる、というのは大切だと思います。
だって、この手を使うことなんてどんどん減っているんですよ。身体を使わずに、使い切らずに、健康的に死ぬ事なんて、できませんから。選ぶのは私達、自分自身です。