【稽古日誌】提灯とライト

いよいよ、12月。今年もあと一ヶ月かと思うとやれていない事の多さに凹みます。
まぁ、それでも、無理に頑張ってみても、うまくいかないのはもう、知っている(笑)。
今、やりたい事をやっていくのが一番なんだ、と自分に言い聞かせているけど、それで結果がドンドン出てきてしまったのが私の「武術」。
 
 
 
学生時代なんかに一生懸命練習に励んだ時期もあったけど、技ができるってのは単なる練習時間じゃないみたいなのだ。
もちろん、時間は大事なんだけど、普通に考えられている時間とはもう、全然違う。
今、自分のために稽古している時間は?と問われるとほとんどありません。
もちろん、講座や稽古会の時間は自分にとっても貴重な時間でとっても良い練習になります。
でも、スポーツ選手がするような自分のスキルのためのトレーニングの時間ってほとんどないもん。
それでも、それまで、まったく出来なかった事が現実に出来るようになったりしてますからね。
 
 
 
きっと多くの人は不安があるから練習するんだと思うんです。勉強も似たようなものかもしれませんね。
でも、甲野先生から学んだ稽古法は違うんです。
とにかく自分の身体、心に興味を持ってみると、いつでもどこでも、なにをしていても、この身体と心に目が行くようになってしまうんです。
 
具体的な練習時間はほとんどなくても、普通に生活をしている間中自分の心と体と対話をしているようなものです。
考えられないほどの成果が出てきてもおかしくないですよね~。
 
 
 
こうして日誌を続けていけるのも、毎日の生活の中でどんな事を考えて稽古しているのかが伝わればいいなぁ、と思ってです。
個々の技や術理の工夫はどうせ変わっていくので、適当に受け止めてもらえれば良いんです(笑)。
それよりも、身体と対話をしながら生きていくって事をもっと、身近に感じてもらえればなぁ、と思っています。
 
そうだ、昨日の日記でしたね。
身体を感じながら生きると言うのは過去を受け入れる、認めるってことです。
感覚を掘り下げ、それまで気づかなかった事を身体に見つけるたびに、自分の身体に感謝の思いが積み重なっていくんです。
 
自信を持って生きろ、って言葉は安易に使われる言葉だけど、自信がない自分をどう信じるのかってものすごく大変な事なんだよね。
武術を通して見える身体が教えてくれるのは才能とかを超えたものすごいものだから。
どんなに自分を否定してみてもこれは、すごい・・・と思わせてくれるものです。
ぜひ、自信をもてない人にこそ、試してもらいたいものです。
 
 
 
 
さて、技の話を少し。
太刀捌きの解説をします。
この動画の身体操法です。
 
 
 
コブシの中の一点に力と意識が集まるようにして見ると動きがよくなり、結果として、こんなにも普通に刀を交わすことができるようになりました。
この時のコブシの感覚ですが、「提灯」と似ている気がしています。
 
 
普段私たちは自分の意思でなにかをしよう、と生活をしています。これを「我」の動きとしましょうか。
我が強くなっても暮らしていけるのは自分の命令を聞いてくれる機械を手にしたからです。
でも、刀を前にした時、逃げなきゃ!と我が命令を手足に下したとしても、手足が動き出すまでにはタイムラグがあります。
このままでは刀を交わせません。
 
 
しかし、コブシに意識が集まった時、自分自身は大きな身体の自分ではなく、ふわりと浮いている「一点」になるんです。
このコブシが動く時にはタイムラグってないんです。いや、ないわけではないと思いますが、圧倒的に短いんです。
 
刀が来た瞬間、そこから逃げて、別の場所へと行けるんです。
この時、コブシは逃げられても、大きな身体はどうなるんだろう?って思いますよね。
身体はコブシにあわせてついてくるんです。ついてくるにもかかわらず、速いんですよね。
 
 
 
我の動きと一点の動き。
サーチライトと提灯のような違いと思って下さい。
威力のあるサーチライトは自分の意思で好きな方向に光を飛ばす事ができますよね。
見たい方向へと光を向ければそちら側は照らされ、見る事ができます。
 
でも、提灯はその周りだけをボワッと照らしています。常に提灯の「周り」だけです。
真っ暗闇を提灯を持って歩けばきっと、その提灯に引かれるように歩くはず。
 
しかし、サーチライトは違います。自分の身体があって、光をそこから発するものです。
自分という主体が胴体にあるのか、手にあるのか。
それが変わってくるんです。
 
 
 
もちろん、暗くないところではライトでも提灯でもどちらでもかまわないです。いらないですし(笑)。
刀を捌くというのも似ています。普通の時、刀もなにも振り下ろされない、恐怖がないときであれば、どっちに意識があってもいいんです。
でも、目の前に恐怖がやってきたとき、自分がどこにいるのか、ってのを考えて見ると対処の仕方が変わってくるんですよね。 
 
 
 
なんだかんだ言っても、今の時代の日本は平和です。
問題意識を持たなければ、気楽に生きていくこともできます。
でも、きっと、人間って知識を増やしていく事で、自然と問題を作っちゃうと思うんですよね。
問題が出来ちゃった人はその問題を解決していかないと幸せな気持ちになれないですからね。それを解決する事をライフワークにして楽しんでください。
そのための役立つツールが身体を細かく感じさせてくれる武術だと思います。

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