自分の中にあるカベ

土曜日は名古屋稽古会での初めての「介護」をテーマにした稽古会を行いました。

参加してくれたのは、これまでの常連さんがほとんどだったのでいつもの稽古のようになるのかなぁと思っていましたが、いざ始まってみれば、介護の稽古は予想以上に楽しく、「テーマ」があることでこれだけ練習がしやすくなるのかと感じました。

カラダという未開拓な分野での稽古だけに、稽古の目的も迷いがちですが、しっかりとした目的を掲げて稽古してみるのもいい感じでした。

その中で初めて参加してくれたSさん(女性ですよ)。わざわざ岐阜から来ていただきました。最初は介護の仕事をされているのかなぁと思っていましたが、話を聞くとそうでもなく、甲野先生をご存知かな?と思ったら、あまり知らないみたいです。今まではほとんどの方が甲野先生やナンバに興味をもたれた方ばかりでしたから、ちょっと雰囲気が違ってきたかなとうれしく思いました。

このSさん。線も細くて、力自体も女性ですからありません。どこから感じてもらおうかと試行錯誤で感覚を伝えました。まずはカラダに体感覚というべき「感覚」があるという事から。

手を握られて、力が詰まって、それが流れるように全身に行き渡らせる事ができるんですよ、と。そして丹田というところに力が行き渡ると手だけで力を出すよりもはるかに楽ですよ、というところを実感してもらいます。

最初、初めて聞く言葉や感覚に戸惑い気味なのがひしひしと伝わってきます。その雰囲気にこちらもちょっとぎこちなく^^

それでも対面での稽古ですから、一つ一つの言葉と感覚を相手のリズムにあわせながら伝えることを考えて指導しました。

女性の方はもともとの力がありませんから、流れを意識してもらうと動きががらっと変わります。腕の力に頼るという執着が無いのでしょうね。私はずいぶんとそれに悩みましたからうらやましいです。

Sさんも戸惑いぎみながら、流れをつくり丹田へと意識しながら動いてみると徐々に動きが「サマ」になってきました。その様子にこちらもうれしくなり、いろいろな技を試してもらいます。伝えたいのはそれぞれの技の「コツ」ではなく、全てに共通する体の感覚です。

遊びのような技を一通りこなして、介護の技に入ったときです。私がSさんに対して添え立ちを体験してもらったときです、彼女の驚いた表情が印象的でした。多分それまでの遊びのような技の中では感じれなかったほど、ナンバの動きに可能性を感じたのでしょう。人それぞれスイッチがあるんですね、感性の。

介護の技を試していくと、これがなかなかいいんです。添え立ちや抱き起こしも「形」にとらわれないように、自分の体に無理が無いように意識してもらったのがよかったのか、どんどんと「らしく」なってきました。

驚いたのが浮きとりです。あぁ、難しい・・・と言いつつしっかりと浮き上がってましたから。あれだけできればあとは、自分が初心者なのだという自覚がなくなればすぐにでも自分のものになるはずです。

改めて自分の気持ちで止めてしまっている部分が大切なのだと実感しました。どうしても謙虚というか、自分にはできないといってしまいがちです。そうすると気持ちが楽ですからね、できなくても。

いってみれば自分の弱さから出てきている謙虚さなわけです。自分自身の動きに真正面から立ち向かい、見てみればきっといろいろな事が分かるはずです。そんなことをSさんから学びました。

稽古後彼女から、

「初めての世界で、とても楽しく勉強させていただきました。これからの生活に活かしていけそうな気がします。」
との感想を頂きましたから、こちらとしては伝わった事もあったんだとほっとしました。

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