上達のための足跡

【身体感覚の足跡】動けない人にもエネルギーは力はたくさんある

物理的には間違いなく、重さはエネルギーです。そう習い、そう計算してきました。しかし、実際に介護や武術の技として使おうと思うと、その重さのメリットを忘れてしまうことが多いです。
 
特に、介護の場面では全く動けない人を前にすると、困ったなぁ、と考える人が多いと思います。自分の力を出さなくては動かない、と思ってしまいますから。
 
重さのエネルギーを実感すると、目の前の動かない人の中にちゃんと力が残っているのが見えるんです。当たり前ですが、力は筋力だけではないのですから。相手の重さを使った技を説明していけば、そこには当たり前の言葉しか出てきません。聞いている人も、うんうん、となっていきます。・・・でも、出来ない。だから困る。わかっていても出来ないというのは、知らないから出来ないときよりもつらいらしく、そこで稽古をやめてしまう人もいるみたいです。
 
やはり体感から納得をしなくてはいけないんですね。
いきなり、自分の持っている最高レベルの問題に当たるのではなく、ただ、軽く手を上げる技のように簡単なところから、確かめた方が良いかもしれませんね。
 
相手の中にある重さを使って動くと、ちゃんと相手にありがとう、と感謝が出来るんです。だって、実際に相手のエネルギーを使っているんですから。感謝できる事があって、感謝したら、うれしい、これは単純ですが、ものすごく大切な事だと思います。それがわかるんですよ、重さを知るだけで!!

【身体感覚の足跡】初めて重さをエネルギーとして感じる

武術、格闘技の世界では身体の重さは力になります。相撲取りはもちろん、柔道、ボクシングの選手も「大きな」選手ほど有利と考えられています。その差が埋められなくなったんでしょう、無差別級がなくなり、細かく体重で分けて競うようになりました。
 
ただ、介護や生活で考えると、この身体の重さはつい、じゃまなものと考えてしまいます。身体の重さが自分の足かせとなって、立ち上がるところから面倒になってきます。行動力が無くなれば意欲がなくなりますよね。悪循環がここから始まります。
 
ケガであれば治ればまた、以前の行動力が戻ってきます。でも、徐々についてきた体重はすぐには減りません、残念ながら(笑)。だからダイエットを・・・という話ではありません。もちろん、ダイエットで余分なお肉をなくす事は「あり」です。でも、体重はエネルギーなんです。下手なダイエットでは体重という数字を落とす事に専念してしまい、元気も一緒になくしてしまうかもしれません。
 
重さが力であり、エネルギーなんだ・・・と実感するにはそこに効率よく動く、仕組みが必要です。動き方をしらなければ、重いものをただ、持ち上げるしかできません。これでは、重さはエネルギーというよりも、抵抗です。
 
そこで、実験です。
胸鎖関節のお話をしました。
腕は肩からぶら下がっているのではなく、鎖骨で胴体と繋がっているのです。
首からぶら下がっている、と思いながら、プラ~プラ~と揺らしてみてください。
「腕の重さ」がエネルギーとなって、自分の胴体を引っ張るほどの力が生まれてくるのがわかるはずです。
 
腕に引っ張られるように動くものと、今までどおり足で自分の身体を押し出すように歩くのと、軽さを比べてみてください。もちろん、考えながらですから、頭はいつもよりも大変です。この頭はちゃんと覚えて、そのうち軽く動けるようになりますからご安心を。

重さを使って動く、という事はずっと、考えてきたテーマでしたが、膝を抜いて、一気に重さを開放する以外にはありませんでした。ぱっと抜けばそれなりに速さは出てきますが、一瞬ですから、コントロールが難しいんですね。肩の力がぬけ(胸鎖関節が意識できた事で)、腕が自然と揺れるようになって、重さを楽に動かす事がわかりました。重さを使っている、という意識が出てきた思いで深い術理です。

【身体感覚の足跡】長い手の見つけ方

胸鎖関節を意識して、そこをスタートにして長い手を確かめる方法です。
両方の胸鎖関節に指先で触れ、その形で腰を廻します。顔は真っ直ぐ向いていてください。
肩、肘が前を向いたときに、身体を止めます。
その後、肩と肘のポジションを変えない様に、手を前へと出していきます。
できれば、その形で誰かに押してもらうと面白いと思います。
 
あっ、そういえば、「普通に」手を前に出した時の強さを確認しておいてください。
自分の身体が「使い方」によって、どれだけ強くなるのか、どれだけ弱くなるのかがわかりますから。
鍛えるだけではなく、効率よく身体を使う方法が「ある」というのは知識だけではなく、実際にその強さを感じる事、経験する事が大切ですから。

【身体感覚の足跡】胸鎖関節を使う

股関節に感覚が生まれて、立つ、歩くという事を改めて考えるきっかけを得ました。やはり、体験って大切です。股関節の事なんて、気にしなくったって生きていけます。でも、気にする事が出来るようになってみると、楽しいんです。
 
脚に股関節があるのならば、腕はどうかと考えてみると、胸鎖関節が頭に浮かびました。
もちろん、それは甲野先生が教えてくれていたからです。ただ、初めて胸鎖関節をつかう、という事を聞いた時には全くわかりませんでした。そんなところを意識して動かす事が出来るようになるとは夢にも思いませんでしたから。
 
それから数年。頭に知識があったおかげで、私でも胸鎖関節を気にする事ができるようになったんです。身体の感覚が芽生えるまで待たなくてはいけないんですね。待っていれば、必ず気づく事ができるはず。ただ、待つために知らなくてはいけない。きっと、知らなくても気づける人の事を才能がある、というんでしょうね。
 
才能がなくても、大丈夫。学んで、待つ。今のところ、それだけで、ものすごく楽しく過ごす事ができます。
 
胸鎖関節の話でした。
首元にある二つの出っ張り。それが胸鎖関節です。
これが腕のスタートだ、と言われています。腕は肩からではなく、この胸鎖関節で胴体と繋がっているんです。

でも、頭ではそう思えない。
手を上げよう、と考えると、肩からぐっと上に上げてしまっていました。
でも、胸鎖関節を意識して、腕を振ってみると、そこに「長い腕」を見つける事ができます。

肩を上げてはいけない、とはよく言われる事ですが、肩を上げないようにするために、胸鎖関節から動く事が有効だったのです。
肩を上げないようにしよう、と心がけていても、胸鎖関節を知らずに、肩から手を使っていては肩を落とし続けるのはとっても難しいです。でも、胸鎖関節から動く、と知っていれば自然と肩は落ちて、より、自然に近い動きをする事ができます。
 
これが「結果としてできる」という事ですね。
頑張らなくても良い、頑張ってはだめ、ってのはこのあたりに秘密がありそうです。

【身体感覚の足跡】股関節を使う

浮き」という状態がすこしわかるようになり、身体の軽さが見え始めた頃です。それまで、足裏に体重が乗り過ぎていたんでしょうね。それが「浮き」により、足裏の負担が減りました。その結果、脚と胴体が繋がっている股関節の負担も減ったからだと思いますが、股関節が「ある」事に気づきました。
 
足裏、特に親指の付け根に体重はかかります。親指の付け根で重心のキャッチボールをして、この身体を動かしているわけです。この重心のキャッチボールの距離が大きくなればなるほど、動きが雑になるんですが、それ以外の方法を知らないために、それで我慢をしているといえます。
 
実は、股関節でも重心のキャッチボールが出来るみたいなんです。
股関節を働かすには足指、膝の負担を減らさなくてはいけません。そのための「浮き」です。
 
自分が想像以上に速く動ける、というのは元気が出ます。
それも努力ではなく、気づきだけで変わるというのは、歳をとることで身体が動かなくなる私達は知っておいた方がいい「知識」です。後は「知識」を「経験」する事だけですね。
 
ちなみに、それを感じたい、というモチベーションは怪我をしたりして自分の身体の故障や衰えを感じたときだったりしますから、不思議です。